親しい取引先から、一昨日電話があった。「熊倉さん、綺麗な含浸処理のルビーとヒスイが入ったんですが見てみますか」と。「色々お持ちのお客様に説明をして遊びでつけて貰うにはいいと思うんですよ」「ただし、超音波洗浄機を使うと割れることがあるので注意が必要らしいです」などという会話が続いた。そして昨日、ルビーが2点送られてきた。
カットルビー 4.5ct
スタールビー 16.3ct
カットルビーの方は技術力不足で本当の色が出ていません。写真より遙かに鮮やかな深紅です。ぱっと見ただけで、カットルビーが200万円~400万円、スタールビーが300万~600万円くらいの商品に見えます。その1/10位でしょうか、含浸処理済みの商品は。昨日はルーペで覗くのも恐ろしくて、放置していました。
そもそも含浸処理というのは工業製品に用いられる有用な技法のようです。例えば三原工業のホームページには有用な事実が書いてあります。宝石の場合は、割れ目などを赤い鉛ガラスで充填して透明度と色をあげる-ということになります。本来のものより「希少性が高く、本来の価値よりも高くみせる」という微妙な技術になります。
今朝開店後に意を決して、10倍のルーペで観察してみました。ほっとしました。自身鑑定士ですが、楽勝でこれは変だとすぐに判別出来るからです。
まずは鉛ガラスの気泡です。自然の内包物に曲線のものは存在しないのです。丸っこい内包物は何かしらの気泡で、ガラス、初期の合成ルビーなどに見られるので、天然ではない、もしくは手を加えられていることが判断できます。
次はルビーのフラクチャーに沿って、赤い鉛ガラスが充填された痕が見て取れます。
非常に綺麗で、価格も安いのですが、これは当店で扱える商品ではありません。その理由としては、
- 処理される前の価値が分からない-安いように見えるが本当はもっと安い物であることは間違いがないので、お客様に価値を呈示できない。
- クリーベッジ(割れ目)の極端に多い石に鉛ガラスをいれて補強して、なおかつ透明度と色を高めているのだが耐久性に問題がある。超音波洗浄機で割れる可能性がある。
こんな空恐ろしい石を宝石専門店が扱えるわけはありません。割れ目の多いダイアモンドも超音波洗浄機で洗うと割れることもあります。この含浸処理は割れ目が表面にまで達しているルビーにしか使えない技術です。割れ目がないルビーだったらガラスがしみこんでいかないからです。
X線写真で見ると割れ目の度合いと鉛ガラスの浸透がよく分かります。
フッ化水素でガラス質を溶かしてみると
右側の内部のガラス質がとけだした物ですが、これが処理前のルビーに近いのではないでしょうか。こういう割れ目の多いルビーの価値は格段に低くなります。こんな物を宝飾品として扱っていたら、信用に関わってきます。
表面まで達する割れ目
・・・・しかし、ここに来てふと思うことがあります。この宝石業界は素人の方の集まりみたいなもので、ルーペを使って石を見ることが出来るのは多く見積もっても、10人に一人くらいでしょうか。根拠は私が最初に丁稚奉公で勤務したのは百貨店に宝飾品を卸す会社でした。外商の方とお客様のお宅にお邪魔して商品の説明をするいわゆる「メーカーさん」でした。営業が50人いましたが、その中でルーペでダイアモンドや色石を見られるのは社長を含めて4人でした。他はずぶの素人。 らしく見せるために各人に10倍のルーペは支給されていましたが・・・・ この現実には驚きましたが、卸の段階でこんな具合ですから・・・10人に一人しかルーペを使えないといっても当たらずとも遠からずだと思います。だから現状を知らずに、もしくは知らないふりをしてこういう商品を売っているんじゃないかと。
ネットショップ、ネットオークション出てくる出てくる。今年こういう処理石が急増して問題となっていますが。いくつか例を挙げてみます。一応会社名などは消しておきます。
商品は
ぱっと見ると綺麗で透明感のあるルビーに見えますが、よくよく見ると無数の割れ目が走っています。本来このルビーはどちらかというと、シロっぽい石だったのに鉛ガラスを湿潤させて、割れ目は透明に、そして色は赤くなった物です。落札者の方は181,000支払っています。
謳い文句は
そして、これはいかがな物かと思われる文章
まずルビー(含浸処理石)とあくまでもさらっと書いてあります。鑑別書も同じように記されます。しかしこの下の矢印部分は、確信犯ですね。
参考上代価格 2,500,000円 二百五十万円ですよ。そして、この価格の合理性を示すような説明。果たして、181,000円払った落札者の方は得をしたのでしょうか。私にはそう思えません。
もう一つの例
こういう風に、鑑別では天然ルビーとして出ます。赤いハイライトは私がつけました。あくまでもさらっと書いてあります。
この商品の謳い文句は ハイライトは私が入れました。
透明度が高く見えるのは鉛ガラスのおかげなのですが・・・・・
商品は
因みにこの商品の落札価格は81,000円です。
処理前のルビーはフッ化水素でガラス質を溶かしたこんな物に近いですが、あなたは未だこの金額を払いますか。この事実は踏まえておいてください。
ほんの二例を挙げましたが、ネットショップ、オークションとも溢れるほどあります。上記二社は犯罪にはなりません。含浸処理と明記していますから。これが免罪符になります。天然ルビーと思えば、まさか、処理前に個々までひどい物だったと想像するのも難しいかも知れません。クーリングオフも難しいかも知れません。しかしこんな処理方法もあるのをご参考までに書きました。
この記事を書くのに下記を参考にしました。
A Discussion on Ruby‐Glass Composites & Their Potential Impact on the Nomenclature in use for Fracture‐Filled or Clarity Enhanced stones in General Kenneth Scarratt GIA Laboratory, Bangkok
(First limited LMHC distribution February 2008)Kenneth Scarratt
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CGL通信 vol.04 「新しい処理のルビーについて」
過度に鉛ガラスが“含浸処理”されたルビーの耐久性
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(株)全国宝石学協会 技術研究室 川野潤(理学博士)















[...] 中国、香港のヒスイ。これは99.9パーセント処理してあります。今、きれいな未処理の緑のヒスイはマーケットには出てこないということを覚えていて頂きたいと思います。含浸処理などで色の処理がされています。 [...]
含浸処理してあってこの値段はひどいですね。
私も含浸処理のルビーを落札したことがありますが、そう言うのはだいたい1ct500円くらいで落札できます。
さぞかし処理されたことをよく分からない人は泣かされていると思います。
[...] 書くべきかどうか迷ったけど-含浸処理のルビー August 2009 1 comment 4 [...]